今回はバイオテクノロジーの計算問題の練習用に群馬大学2017の入試問題を解説しました!
「三点交雑法」や「DNAの遺伝子として働いている領域を求める問題」「制限酵素で切断した時のDNAの塩基数を求める問題」などいろいろあるのでオススメです!
個人的には以下の☆印がついた問題がオススメです!
0:06 A 問1 空欄補充(動原体やセントロメア、キアズマの説明)
2:56 A 問2 減数分裂の開始時期
3:18 A 問3 無性生殖を選ぶ問題
4:50 A 問4 検定交雑の基本知識
5:12 A 問5 ☆三点交雑法1
7:01 B 問6 ☆三点交雑法2
8:45 B 問7 ☆三点交雑法3
9:50 B 問8 ☆三点交雑法4
14:29 A 問1 ☆遺伝子領域の割合を求める問題
19:35 A 問2 ☆DNAリガーゼで結合できるものを選ぶ問題
21:52 A 問3 伴性遺伝の基本知識
22:41 A 問4 SNPとは何か
23:37 B 問5 電気泳動の基本知識
24:31 B 問6 ☆制限酵素で切断されたDNAの塩基数を求める問題
以下問題文(図は省略)
A.減数分裂は,連続した2回の分裂により,1個の母細胞から4個の娘細胞が形成される。第一分裂前期では,2本の相同染色体から構成される二価染色体が形成される。このうち,複製された染色体どうしは ア と呼ばれる部位で結合しているが,対合する相同染色体どうしは イ と呼ばれる部位で結合している。第一分裂後期に相同染色体が離れるとき, イ を形成していた部分でその一部を交換した染色体ができる。このようなしくみで起こる染色体の交換を ウ という。
同一染色体上の2つの遺伝子座にある遺伝子は,減数分裂によって分配される際,基本的には行動をともにする。これを エ しているという。しかし,2つの遺伝子間で染色体の ウ が起こると,2つの遺伝子の組み合わせが変わる。これを遺伝子の組換えという。
一般に,a個体の遺伝子型を表現型から直接知ることはできない。そこで,b検定交雑という手法を用いて遺伝子型を判定する。検定交雑は,2つの遺伝子間の組換え価を求める際にも使われる。同一染色体上にある遺伝子群の中から3つの遺伝子を選び,それぞれの組換え価を求める方法を三点交雑といい,これを用いることで3つの遺伝子の相対的な位置関係を知ることができる。
問1 空欄 ア ~ エ にあてはまる適切な語句を記せ。
問2 減数分裂の過程において,DNAはどの時期に複製されるか,正しいものを次の①~④の中から1つ選び,記号で答えよ。
① 第一分裂開始前 ② 第一分裂前期 ③ 第一分裂後期
④ 第一分裂から第二分裂に移行する時期
問3 下線部aについて,遺伝子型と表現型が一致する生物を次の①~⑤の中からすべて選び,記号で答えよ。
① ウニ ② アカパンカビ ③ 大腸菌
④ 酵母 ⑤ イネ
問4 下線部bについて,検定交雑を行うために用いる接合体として正しいものを次の①~④の中から1つ選び,記号で答えよ。
① 優性ホモ接合体 ② 劣性ホモ接合体 ③ ヘテロ接合体
④ 優性ホモ接合体と劣性ホモ接合体の1:1混合物
問5 組換え価から作られた染色体地図と実際の染色体上の遺伝子間の相対的な距離は必ずしも一致していない。この理由として考えられることを30字程度で記せ。
B.体色,眼色,はねの形に関する野生型と突然変異型のショウジョウバエを用いて検定交雑を行った。それぞれの表現型の個体数を数えることで組換え価を求め,体色,眼色,はねの形の遺伝子の相対的な位置を表す染色体地図を作成する実験を行った。
材料
野生型(正常体色/正常眼色/正常ばね)
突然変異型(黒体色/しん砂色眼/先切ればね)
問6 体色とはねの形を決定する遺伝子間の組換え価を求めるために,上に示した表の個体数を参考にして下に示した表の空欄A,Bに入る適切な数値を記せ。
問7 体色とはねの形を決定する遺伝子間の組換え価は何%か,小数点第1位まで答えよ。
問8 検定交雑の結果から組換え価を計算して染色体地図を作成せよ。下に示した模式図中の C ~ E に突然変異型の表現型を, F , G には組換え価を記せ。なお,組換え価は小数点第1位まで答えよ。
(2) 次の文章を読んで,問1~問6の答を解答欄に記入せよ。
A.aヒトゲノムの解読により,どの遺伝子がゲノム上のどの位置に存在しているのかが明らかとなってきた。また,b遺伝子治療のように,cある遺伝子が正常にはたらかない患者の細胞に正常な遺伝子を入れる試みや,dオーダーメイド医療など,病気を治療する上で重要な知見も得られるようになった。
問1 下線部aの結果から,ヒトの遺伝子からつくられるタンパク質は平均6.0×102個のアミノ酸からなることがわかった。ヒトゲノムの塩基対数を3.0×109,遺伝子数を2.5×104とすると,ヒトゲノムのうち,タンパク質をつくり出す領域は何%か,計算過程を示して答えよ。
問2 下線部bについて,遺伝子治療では,バイオテクノロジーのうちの遺伝子組換え技術が用いられる。代表的な遺伝子組換え実験に,制限酵素やDNAリガーゼを用いてプラスミドに目的の遺伝子を組み込む方法がある。図1のようにEcoRIと呼ばれる制限酵素で1か所切断したプラスミドに正しく組み込むことの可能なDNA断片を次の①~⑩の中からすべて選び,記号で答えよ。なお,DNAリガーゼは,同じ制限酵素で切断した末端どうし,平滑末端どうし,または同じ塩基配列の一本鎖の突出部をもつ末端どうしを連結することができる。
問3 下線部cについて,次の文章を読み, ア と イ にあてはまる適切な語句を記せ。
赤色と緑色の微妙な色調の違いが識別できない赤緑色覚障害の原因となる遺伝子は ア 上にあり,正常な遺伝子に対し劣性である。男性は ア を1本しかもたないので,この遺伝子を保有すると病気を発症する。このため赤緑色覚障害は,女性よりも男性に多くみられる。このように性別の違いによって形質の現れ方が異なる遺伝形式を イ という。
問4 下線部dは,患者の体質にあわせて薬の処方や治療の最適化を目指す医療のことである。DNAの塩基配列には個体ごとに違っている部分があり,SNPやマイクロサテライト多型と呼ばれる。このうち,SNPは病気や薬の効き方,副作用などに関係があると考えられており,オーダーメイド医療への応用が期待されている。SNPとはどのような違いのことか,20字程度で説明せよ。
B.塩基対数の異なるDNA断片の分離には,アガロースゲル電気泳動法が用いられる。アガロースゲルのウェルと呼ばれるくぼみに,さまざまな塩基対数のDNA断片を含む試料を注入し,溶液中で一定方向に通電すると,DNAは ウ の電荷をもつため,DNA断片が エ 極から オ 極へ向かって移動する。アガロースゲルは小さな網目構造をしているため,DNA断片がゲル中を移動するときにふるいのはたらきをして,断片の大きさに応じて移動する速度が異なり,その結果,塩基対数の カ いDNA断片ほど速く移動する。
問5 ウ ~ カ にあてはまる適切な語句を記せ。
問6 pUC19と呼ばれるプラスミドの塩基対数は2,686であり,その配列中にはPvuⅡと呼ばれる制限酵素によって切断される場所が2か所ある。PvuⅡによって切断される配列とその切断面を図2に示す。pUC19に含まれる -TCGCGCGTTT- という配列の最初のTを1番目とすると,PvuⅡがDNAを切断するのに必要な -CAGCTG- という配列は306番目から311番目ならびに628番目から633番目にある。pUC19をPvuⅡで完全に切断して得られたDNA断片をアガロースゲル電気泳動法で分離すると,観察されるバンドの数はいくつになるか。また,ウェルから最も近い位置に観察されるバンドに含まれるDNA断片の塩基対数はいくつになるか。