都会と山奥、どっちに暮らすのがよりエコなの?
- Dharna Noor – Gizmodo US
- [原文]
- ( 山田ちとら )
「Burning Questions」へようこそ。
気候変動に関する読者からの質問や疑問を深掘りしていく米ギズモードのこのコラム。今回のテーマは「エコな暮らし方」です。
私たち一人ひとりがどのような生活を心がければ、二酸化炭素排出量を削減し、これ以上気候変動に拍車をかけずに済むのでしょうか?
本当にサステナブルな暮らしって、一体どんなものなんでしょうか。
都会を離れ、山小屋でつつましやかに暮らす世捨て人を想像してしまいがちですが、山奥で暮らしているからって必ずしもカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を減らせるとは限らないんです。
オフグリッド生活の落とし穴
なんらかの方法で自家発電を行い、電力会社の送電網に依存しない「オフグリッド生活」は、その度合いによって様々な暮らしぶりが考えられます。極端な例は、電気・ガス・水道に頼らず、自分の食料を100%調達する完全なる自給自足生活ですね。ロマンチック…かな?でも、ほとんどの現代人には実現不可能な暮らし方です。
これよりもうちょっと現実的なのは、太陽光発電パネルと水道を組み合わせたインフラを整えて、自分の食べる分だけ作物を作り、ほかの資源はなるべく節制する暮らし方。こういう夢のような暮らしぶりはYouTubeでわんさか見かけますけど、本当にエコな暮らしかどうかはスケールの大きさによって決まってきます。
山奥にオフグリッドの屋敷を構えたとしても、消費する資源の量を減らせなければエコな生活にはなりませんよね。このことから、オフグリッドであるかよりは、どのようなライフスタイルを選択するかがより重要と言えるでしょう
と説明してくれたのはセント・フランシス大学エネルギー研究所のプロジェクト・コーディネーター、セル(Michael Sell)氏。
たとえば、薪ストーブを炊いたり、物資の調達や通勤などにガソリン車を使用すると、カーボンフットプリントは増えます。薪ストーブにはなんとなくエコなイメージがつきものですけど、実は化石燃料を燃やすよりも気候変動に悪影響を及ぼしてしまう可能性が指摘されているんですね。
それと、自分の食べ物を自分で作るのは地産地消という点では二酸化炭素排出量を抑えられますけど、食べたいものすべてを自分で作るのにはやや無理がありますし、もし水道水のかわりに地下水を汲み上げることになったら逆に二酸化炭素排出量を増やし、気候変動を悪化させてしまう恐れだってあります。
一方で、納戸サイズの小さな家に住み、ソーラーパネルで自家発電し、雨水を貯蓄してコンポストトイレを使うなどの工夫をすれば、「おそらくカーボンフットプリントを下げることはできるでしょう」とセルさんは話しています。
都会でもエコな暮らしは可能
なにも山奥でオフグリッドな小屋に立てこもらずとも、やり方次第で都会に住みながらもサステナブルな生活を営むことは可能です。
そもそも人口密度が高いほうがより効率よくライフラインを供給できます。長距離間のエネルギー送電は無駄が多いですし、僻地から車などの移動手段を使って通勤したり、買い出しに行ったりするのもエネルギーの無駄使いになりますよね。
都市部には人口が密集しています。ですからエネルギーの輸送と管理がより安く、より効率的に行えて、二酸化炭素排出量を抑えることができます
とメールで説明してくれたのはキール大学のジョージ(Sharon George)上級講師。
ただし、食料や物資をどこからどうやって調達してくるかなど、都市部での生活にはカーボンフットプリントを上げてしまうリスクが山積しています。国連の調査によれば、都市は地球の面積の2%にも満たないに関わらず、世界中で生産されるエネルギー量の78%を消費し、世界中で発生する温暖化ガスの60%以上を排出しているそうです。
ところが、消費を個人レベルで見てみると、都市部の住民は平均して郊外に住んでいる人よりカーボンフットプリントが小さいとする調査結果も出ているんですね。ただし、都市部でカーボンフットプリントを軽くするにはソーラーパネルを設置するなどの初期投資が必要となってくるので、多くの人にとって経済的なハードルが高すぎます。また、将来的には世界人口が減っていく中で、環境に対して収穫逓減が起きることも予想されます。
都市の電力化・効率化がカギ
森の中に小さな家を建ててオフグリッドな生活を営めば、あなた個人のカーボンフットプリントを減らせるでしょうし、自然の恵みを満喫できて楽しいでしょう。でも、現実的には世界の人口のほとんどが暮らしているのは都市部です。なるべく多くの人が不自由なく暮らせて、しかも地球規模で二酸化炭素排出量を削減するには、いかに都市のエネルギー効率を上げて、車に頼らなくても済むように公共交通を整えたり、石油に依存しない暮らし方にフォーカスしていく必要があります。
では、車に依存しないための都市計画とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
コンパクトシティ構想と、手頃な価格で利用できる公共交通機関は大切な要素でしょう。社会学学者のアルダナ・コーエン(Daniel Aldana-Cohen)が2014年に発表した研究結果によれば、巨大な国際都市でさえ、密集住宅と公共交通機関を組み合わせることにより、二酸化炭素排出量を2030年までに3分の1に減らせる見込みがあるそうです。
エコ設計された公営住宅の供給を増やし、公共交通手段を充実させて、徒歩でも移動できる街づくりを推進すれば、都市部での生活が多くの人にとって快適で、経済的にも環境的にもやさしくなるでしょう
とアルダナ・コーエンさんは説明しています。
そのほかにも、ガスヒーターなどを石油を燃やさない光熱システムに切り替えたり、教育施設のカーボンフットプリントを下げる取り組みを展開したり、家を新たに建てるのではなく既存の建造物を修繕・高効率化して使い続けたりするのも有効な対策で、特に中・低所得者層コミュニティーに適しています。
そして、もしあなたがいずれ森の中でのオフグリッドな生活を選んだとしても、都市部の影響を受け続けることを忘れないでください。都市のエコ化が進まなければ、地球温暖化に歯止めはかかりません。いずれあなたの家も山火事で焼失したり、井戸が枯渇したり、マダニを介した疫病にかかってしまうリスクが高くなってしまいます。
結局のところ、サステナブルな暮らしとはなんでしょうか?
アルダナ・コーエンさん曰く、
ソリューションは、多くの人の手には届かないオフグリッドな暮らし方ではありません。むしろ、いかにエコ社会主義を都市部に定着させるかです。
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