新しいテレワーク時代の夜明け。「分身ロボットカフェ DAWN ver. β」が日本橋にオープン
- 山田ちとら
世界初の試み。
先日の2021年6月21日、東京・日本橋のどまんなかに「分身ロボットカフェ DAWN ver. β」の常設実験店がグランドオープンしました。
こちらのカフェで接客をしてくれるのは「OriHime」と呼ばれる全長23センチのミニ分身ロボットと、自立走行が可能な全長120センチの「OriHime-D(”D”はデカイの意)」。OriHime-Dは上半身に14の関節用モーターを内蔵しており、物をつかんだり運んだりできます。
OriHimeを開発した株式会社オリィ研究所によれば、どちらの分身ロボットにもカメラ、マイク、スピーカーが搭載されていて、インターネット経由で操作できます。これにより、何らかの理由で外出が困難になった人でも分身テレワークを通じて、社会の中で役割を持つことができるようになりました。
常設店、ついに
実は「分身ロボットカフェ DAWN ver. β」がオープンしたのはこれが初めてではありません。
2018年11月には赤坂にある日本財団内で10日間の期間限定オープンを果たし、10名の「パイロット」がOriHime-Dを遠隔操作してサービススタッフとして参加しています。その後も12日間の開催期間中に30名のパイロットが参加し、今回の日本橋店ではこれまでで最多の50名が参加しているそうです。
国内外からテレワーク
OriHime-Dのパイロットは、肉体的あるいは物理的な理由で出勤できないけど働きたい!という意欲を持っている国内外在住の方々です。はるばるオーストラリアから分身テレワークしてるパイロットさんも。
6月21日に行われたオープニングセレモニーでは、パイロットの代表として三好史子さん(通称ふーちゃん)が島根県からオンライン登壇。今までできないと思われていたことを、OriHimeを通じてできるようになった経緯を語ってくれました。
欲しかった「もうひとつの体」
冒頭の挨拶で、株式会社オリィ研究所の共同創設者代表取締役所長・吉藤オリィさんは常設実験店のオープンが「念願だった」と胸の内を語ってくれました。
幼少期の吉藤さんは、体が弱かったために登校できない日々が続き、「どうして人間にはひとつしか体がないんだろう」と考えていたそうです。もうひとつの体があれば、学校にも行けるのに、と。
私の親友にして一緒にOriHimeを作ってきた番田雄太が亡くなって、今日で半年
4歳で交通事故で脊髄損傷で寝たきり、20年間、学校も通えず友達も居ない絶望の入院生活、唯一動く顎を使ってPCを操作し、2013年に私をネットで見つけてOriHime開発に参加。様々な挑戦、前例を築いた男@myendorespic.twitter.com/kR6cRZkMvx
— 吉藤オリィ@分身ロボットカフェ常設実験店 6.22日OPEN (@origamicat) March 7, 2018
吉藤さんは、やがて交通事故の後遺症により寝たきりになった番田雄太さんと出会い、分身ロボットの開発を共に志すようになりました。
出会いと発見がないことが、外出困難な障がい者にとって一番のハンディキャップ。
生前の番田さんはこのように話していたそうです。さらに吉藤さんは「人は生きている限りいつか外出困難者になる」とも指摘。
病気、事故、老衰、または育児や介護の必要性から、室内に束縛されてしまう可能性は誰にだってありますよね。そして、昨今のコロナ禍において、「自由に外出できない」ことがどんなに辛いかは世界中の人が体験しているのかなとも思います。
そのうえで大切になってくるのは、たとえ外出困難になってもどうやって自分らしく生きていくか。働き方の選択肢を持つことも、また「自分らしさ」を表現できる大事な要素です。
より良いリモートワーク環境の創設
分身ロボットカフェ DAWN ver. βは、Aエリアのダイナー、Bエリアのバーカウンターと、Cエリアのカフェラウンジが融合するようなレイアウトとなっているそうです。
バーカウンターでは元バリスタのパイロットが「テレバリスタOriHime × NEXTAGE」と呼ばれるバリスタロボットを遠隔操作し、コーヒーを淹れてくれる世界初の試みも。
DAWN ver. βのウェブサイトによれば、天井に多数の電源を仕込んだり、大型モニターや定点カメラを設置したり、カフェとしての快適さを追求しながらも、実験に適した設備となっているそうです。そのため吉藤オリィ氏をはじめオリィ研究所のエンジニアたちも、実験のため頻出されるのだとか。
あらためて、「世界は動く人のために作られている」(吉藤オリィ氏)と実感させられました。そして、体を動かせることを前提とした社会において、動かせない人々は、自分らしく生きるためにいくつもの社会構造的なハードルを乗り越えていかなければならないんだな、とも。
分身ロボットカフェ DAWN Ver.βのような取り組みが今後国内外問わず増えていけば、働く側の選択肢、そしてそれらのお店に客として来店する選択肢だって増えていきますよね。分身ロボットさえあれば、コロナ禍の海外旅行だってなんのその。新しい時代の夜明けを感じます。
店舗営業情報
- 【店舗名】分身ロボットカフェ DAWN Ver.β(ドーン バージョンベータ)
- 【営業時間】Cエリア10:00~/A・Bエリア12:00~ 10:00~19:00 ※OriHimeが接客する席の営業時間は、店舗全体の営業時間と異なる場合があります。
- 【定休日】不定休(メンテナンスによる休業の場合は公式サイトなどで告知)
- 【席数】 約70席
- 【公式サイト】https://dawn2021.orylab.com/
- 【アクセス】
- 住所 : 〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3丁目8-3 日本橋ライフサイエンスビルディング3 1F
- 最寄り駅 : 東京メトロ日比谷線 「小伝馬町駅」 徒歩4分
- JR総武線快速 「新日本橋駅」5番出口すぐ
- 東京メトロ銀座線・半蔵門線 「三越前駅」 徒歩7分
- JR山手線 神田駅 徒歩10分
Reference: 株式会社オリィ研究所 (1, 2), DAWN Avatar Robot Cafe
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